解決事例
2024.05.31
子宮外妊娠(異所性妊娠)を卵巣機能不全等と誤診した医師の過失を認めた事例(東京地裁 平成5年8月30日判決)
事例の概要
患者は、下腹部の強い痛みと不正性器出血のため被告病院を受診しました。
問診では生理が遅れていることも伝えていましたが、医師は妊娠か否かの検査を怠り、骨盤腹膜炎や卵巣機能不全と診断して患者を入院させることなく、鎮痛剤と抗生剤を投与しただけでした。
その後、患者は腹腔内出血のため救急搬送され、開腹手術により子宮外妊娠が判明しました。手術では卵管破裂のため左卵管が切除されました。
患者側は、医師の誤診により、子宮外妊娠に対する適切な診察や検査を受けられないまま、卵管破裂による出血で死亡するかもしれないという危険にさらされ、さらにお腹に大きな手術痕が残ったとして慰謝料700万円を請求しました。
裁判所の判断
患者に子宮外妊娠の可能性を強く示す症状が複数あったにもかかわらず、医師は子宮外妊娠の検査に必要不可欠なhCG検査を実施せず、骨盤腹膜炎・卵巣機能不全と誤診しました。
そのため、誤診がなければ、子宮外妊娠の疑いをもって患者を入院させ入念な検査を実施し、診断が確定しだい開腹して卵管を摘出することができたにもかかわらず、その処置を怠ったため患者の卵管が破裂するに至ったと、医師の過失を認め、慰謝料200万円の支払いを命じました。
この記事を書いた人(プロフィール)
富永愛法律事務所医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)
弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。