新生児仮死
赤ちゃんのトラブル
生まれたばかりの赤ちゃんは免疫力が弱く、体のつくりも未熟なため、様々な病気にかかりやすいです。
また、生まれるまでの過程においても病気を発症することがあります。
ここでは、赤ちゃんに起きる、重症化すると危険な症状や、脳性まひにつながる可能性のある病気を中心に紹介します。
新生児仮死
どんな病気?
生まれた時に赤ちゃんが真っ青な色をしている、呼吸ができない、力強く泣けない、手足が動かせないような状態のことを新生児仮死といいます。
全出産の約10%に起こると言われています。10人に1人だと考えると多いと感じるのではないでしょうか。
脳に十分な酸素が送られないことで、脳がダメージを受けている状態を低酸素性虚血性脳症といい、重度の脳性まひなど後遺症が残ってしまう可能性があります。最悪の場合は死に至ることもあります。
なぜ起きるの?
新生児仮死はほとんどの場合、出産のときの胎児仮死に続けて起こります。お母さんの胎盤の機能が低下したり、その他の要因で赤ちゃんにうまく酸素や血液が送れずに、お腹の中にいる時や出生時に赤ちゃんが苦しい状態になって、生まれてからもうまく呼吸ができず心臓の動きが悪くなってしまうのです。
具体的には、早産、常位胎盤早期剝離、臍帯圧迫、胎児発育不全などが原因として挙げられます。赤ちゃんの先天的な異常が原因となることもあります。
どんな症状?
呼吸障害(低換気)、チアノーゼ、筋緊張の低下、刺激に対する反応低下などがみられます。
新生児仮死はアプガースコアによって重症度を測定し、正常、軽傷仮死、重症仮死の診断を受けます。
どんな治療を
するの?
生まれてすぐに体温低下を防ぐため、赤ちゃんを温めながら蘇生(そせい)を行います。口腔内の羊水を吸引し、皮膚刺激などを行い呼吸を促します。呼吸状態が安定しない場合は、バッグバルブマスクを赤ちゃんの口に当てる、または気管内挿管をして口の中にチューブを通して人工呼吸を行います。
アプガー
スコアって?
アプガースコアは、出生時の新生児の心肺系および神経系の状態を評価し、新生児仮死の有無を判断するための目安になるスケールです。新生児仮死は出生時に呼吸循環不全を呈する症候群ですが、気道確保や保温などの適切な管理が行われないと、新生児の生命予後や神経発達障害などが発現することがあります。新生児仮死の徴候を速やかにとらえられるよう、アプガースコアは、全国的に広く用いられている指標です。
新生児の約10%は分娩時に何らかの呼吸補助を必要とし、新生児の1%未満が、より包括的な蘇生を必要とします。出生時に蘇生が必要となる原因は数多くありますが、出生体重が1500g未満の場合は蘇生の必要性が高くなります。しかし、このスコアは蘇生やその後の治療の指針をもたらすツールではありませんし、個々の赤ちゃんの予後を決定するものでもありません。あくまで、赤ちゃんの状態を評価するための指標です。
測定項目
アプガースコアは、新生児の健康状態に関する5つの測定項目で測定します。
対する反応
上記5つの項目にそれぞれ0から2までの点数が割り当てられます。スコアは生理的成熟度および出生体重、周産期の母体に対する治療、胎児の心肺及び神経学的状態に依存します。生まれてから5分時のスコアが7~10点であれば正常、4~6点であれば軽傷仮死(第一度仮死)、0~3点であれば重症仮死(第二度仮死)とされます。
アプガースコアからわかること
アプガースコアの低値には多くの考えられる原因があります。これには予後が不良である重傷で慢性の問題もあれば、速やかに解消でき予後が良好である急性の問題もあります。アプガースコアは単に臨床所見にすぎませんし、診断ではありません。アプガースコアは通常赤ちゃんが生まれて1分後と5分後に評価して採点します。1分後のアプガースコアが低くても、5分後正常範囲内であれば一安心ですが、低いままの状態であったり、逆に点数が下がっているという場合は、その後の赤ちゃんの状態に大きな影響を及ぼす可能性もあるので、NICU(新生児集中治療室)での管理が必要になることが多いです。そのため、5分後のアプガースコアが7点未満の場合は、その後もアプガースコアの採点を続けることがあります。正常範囲になるまでどのくらいの時間がかかったか、といいうことも重要なポイントになります。
重症胎児仮死の状態で生まれた赤ちゃんが元気に回復できるかどうかは、1分後から5分後までにアプガースコアが、どの程度改善したかが一つの目安になります。その他にも、アプガースコア以外に出産時の臍帯血(へその緒の血管からの採血検査)の状態なども赤ちゃんの状態を評価するための重要な指標になります。