妊娠中の体重管理 何が正しいの? - 産科医療LABO
産科医療LABOについて
妊娠・出産のトラブル
相談の流れ・費用
instagram
youtube

新着情報

妊娠中の体重管理 何が正しいの?

2024.10.16

富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
司法試験に合格し、弁護士事務所での経験を積んだ後、国立大医学部を卒業し医師免許を取得
外科医としての勤務を経て、医療過誤専門の法律事務所を立ち上げました。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、法律と医学の両方の視点から産科を中心とした医療問題について発信します。


妊娠中の体重管理について悩まれる妊婦さんは多いのではないでしょうか。
2021年に日本産婦人科学会は、新たに「妊婦の体重増加指導の目安」を公表し、従来の指針を撤廃しました。

このコラムでは、現在推奨されている望ましい体重増加の目安を中心に、妊娠中に体重が増えない、または増えすぎた場合に予想されるリスクや赤ちゃんへの影響について解説します。

妊娠前のBMIを調べましょう

ご自身に望ましい体重増加量を知るためには、妊娠前の体型からBMIを確認します。
BMI(Body Mass Index)とは、世界共通の低体重(やせ)や肥満度を測定するための指標です。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

例えば、身長155㎝・体重50kgの場合
155÷1.55÷1.55=20.8 BMI値は20.8となります。

日本肥満学会とWHOの基準により、妊娠前のBMI:18.5未満がやせ、BMI:25以上が肥満とされています。

なぜ妊婦の体重増加指導の目安が新しくなったのか?

妊婦さんの体重管理と聞くと、産婦人科での厳しいチェックや指導を想像されるかもしれません。実際に、病院から体重に関する指導を受けたことがある人も多いでしょう。これまで、欧米などに比べると日本の産婦人科の体重管理は厳しいものでした。

しかし、日本では低出生体重児が増えていること、その背景に日本でやせ型の妊婦さんが多くなっていることから、やせすぎてしまうことが問題と考えられるようになり、新しく「妊娠中の体重増加の目安」が策定されました。

従来の指針(現在は廃止されています)

新しい妊娠中の体重増加の目安

妊娠前の体格によるリスク

  • やせの女性(BMI:18.5未満)

切迫早産、早産、貧血および低出生体重児のリスクがあります。

  • 肥満の女性(BMI:25以上)

妊娠高血圧症候群(昔は妊娠中毒症といわれていました)、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクがあります。

妊娠中の体重増加量によるリスク

  • 体重増加量が著しく少ない場合(十分に栄養がとれていない)

低出生体重児、早産のリスク

  • 体重増加量が著しく多い場合(栄養をとりすぎている)

巨大児、帝王切開分娩となるリスク

妊娠中はたくさん食べなければいけない?

妊娠中に必要なエネルギー摂取量は、非妊娠時と比べてどのくらい増えるのかご存知でしょうか?

1日当たり

初期…+50kcal(バナナ1本分)

中期…+250kcal(バナナ5本分)

後期…+450kcal(バナナ9本分、おにぎりでいうと2.5個分)

目安としてバナナ1本が約50kcalおにぎり1個で約170~180kcalといわれています。

妊娠が進むにつれ、必要なエネルギー摂取量も増えていきますが、食べ過ぎには注意が必要です。

妊娠初期には、つわりなどで思うように食事が摂れない時期などもあるかもしれません。体調が落ち着いてから、十分栄養をとり、体重管理を行っていきましょう。

また、食事量だけでなく、バランスよく栄養素を摂ることが大切です。例えば、鉄分をとることで貧血予防に、カルシウムは赤ちゃんの歯や骨の成長に欠かせません。ブロッコリーやホウレンソウに多く含まれる葉酸も、赤ちゃんの発育に必要な栄養素です。

妊娠中の貧血について、妊娠中に貧血になりやすいのはなぜ?対策は?で解説していますので、あわせてご覧ください。

妊婦さんの適切な体重管理は、赤ちゃんの健康のためにも大切

妊娠前の体格によって、体重増加量の目安は異なります。

ご自身のBMIからどれくらいの体重増加が望ましいのかを知り、細かく毎日考えすぎると疲れてしまうので、何日かをかけてバランスを取ればいいと思いながら、ストレスにならないよう適切な体重管理をすることが大切です。

産婦人科診療ガイドラインでは、個人差を考慮したゆるやかな指導を心がけるよう推奨しています。体重の増加量や妊娠中の食事について心配なことがある場合は、産婦人科の主治医や助産師さんに相談してみましょう。

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

相談のお申し込み