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羊水塞栓症とは。妊婦さんの死亡率が高い危険な病気です

2024.04.04

富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
司法試験に合格し、弁護士事務所での経験を積んだ後、国立大医学部を卒業し医師免許を取得
外科医としての勤務を経て、医療過誤専門の法律事務所を立ち上げました。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、法律と医学の両方の視点から産科を中心とした医療問題について発信します。


世界からみてれば、日本は妊婦さんが安全に出産に臨める医療体制・環境が整っているといわれています。しかし、そんな日本でも妊娠・出産のトラブルで命を落とす妊婦さんが毎年20人以上おられるのも事実です。
このコラムでは、妊娠・出産特有の病気の中でも、妊婦さんが亡くなる確率が高い「羊水塞栓症」について解説します。

どんな病気?

羊水塞栓症は、羊水が母体の血中へ流入することで起こります。約2万~3万分娩に1例ほどの確率で起こるといわれおり、まれな病気ではありますが、急激に症状が悪化し、妊婦さんの死亡につながる危険な病気の一つです。羊水の中には赤ちゃんの成分(胎脂、皮膚、胎便など)が含まれていて、それがお母さんの血液に入ることで、血管を詰まらせたり、アナフィラキシー様反応が起こると考えられています。分娩中、特に破水後に多く発生します。

羊水塞栓症の分類

羊水塞栓症には、肺などの呼吸器に影響を与える心肺虚脱型と大量出血を主体とする子宮型に分類されます。代表的な症状は、低酸素症・低血圧・血液の凝固障害です。

心肺虚脱型羊水塞栓症

症状は、呼吸困難や胸痛、意識消失、低血圧、ショック症状が生じ、症状が進むと心停止に至ることがあります。

子宮型羊水塞栓症

子宮や性器からの原因不明のサラサラとした大量出血から始まり、体の中で出血と血を固める作用が制御できなくなるDIC(播種性血管内凝固症候群)を合併することがあります。DICが進行することで死に至ることがあります。

羊水塞栓症のリスクが高くなる要因

  • 帝王切開
  • 鉗子分娩
  • 子癇

この他にも、頸管裂傷や子宮破裂、前置胎盤、胎盤早期剥離などもリスクとして挙げられます。

羊水塞栓症の死亡率

羊水塞栓症の母体死亡率は以前は60~80%ともいわれていましたが、最近の報告では20~40%といわれています。

羊水塞栓症の治療法

酸素投与、輸血、DICに対する治療が必要になるため、速やかなICUでの管理、高次医療機関への搬送が求められます。
救命には、羊水塞栓症の早期診断・治療が不可欠で、治療をすぐに開始するために、確定しなくても症状などから考えて臨床的に羊水塞栓症の診断を行います。

  1. 妊娠中または分娩後12時間以内に発症した場合
  2. 下記に示した症状・疾患(1つまたはそれ以上でも可)に対して集中的な医学治療が行われた場合
    A)心停止
    B)分娩後2時間以内の原因不明の大量出血1500ml以上)
    C)播種性血管内凝固症候群
    D)呼吸不全
  3. 観察された所見や症状が他の疾患で説明できない場合

以上の3つを満たした場合、臨床的羊水塞栓症と診断され、治療が始められます。

妊産婦の死亡原因で最も多い病気

妊産婦の死亡原因で多いのが、産科危機的出血、脳出血、心肺虚脱型羊水塞栓症といわれています。羊水塞栓症は、産科危機的出血に分類されている子宮型羊水塞栓症を含めると死亡原因として最も多い病気といえます。

妊婦さん自身がこの病気を予防することは難しいですが、例えば、急に息苦しさを感じる時には呼吸不全のサインのことがありますし、不安な症状があれば我慢せずに主治医や助産師さんにお伝えすることが必要です。また、分娩機関では常に羊水塞栓症を含む母体の急変を念頭に適切に対応することが求められています。

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