羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)
お母さんのトラブル
切迫早産などを含めると、妊娠・出産による合併症は全妊産婦の50%以上に発生すると言われています。
それだけ多くのトラブルが起こりやすい、妊娠・出産。
ここでは重篤化すると危険なお母さんに起こるトラブルを紹介します。
羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)
どんな病気?
羊水塞栓症は、赤ちゃんを守っている羊水が母体の血中に流入することで起こり、
発症すると急激に症状が悪化することから妊産婦さんの死亡につながる危険な病気です。
発症の頻度は、約2万~3万分娩に1例といわれています。
なぜ起きるの?
分娩中の破水や、帝王切開などがきっかけで、母体の血中に、羊水に含まれる胎児成分(胎脂、皮膚、胎便など)が混入することで、 アナフィラキシー様反応が起こり、心臓や肺の臓器障害を引き起こすと考えられています。
どんな症状?
羊水塞栓症は、呼吸不全や心不全などを呈する➀心肺虚脱型と、性器からの大量出血から始まる➁子宮型に分類されます。
また、原因不明の胎児機能不全に羊水塞栓症が隠れている場合もあります。
➀心肺虚脱型羊水塞栓症
呼吸が苦しい、血圧が下がる、意識がなくなるなどの症状から、30分程度の短時間で心停止に至ることがあります。
➁子宮型羊水塞栓症
胎盤が出た後や、帝王切開時のサラサラとした性器出血から始まります。
重症の弛緩出血を合併していることが多く、体内で出血をコントロールできなくなるDICの状態に陥ると母体の命にかかわります。
どんな人に
起こりやすいの?
妊娠経過に問題のなかった妊婦さんでも起こります。
次のような場合には、リスクが高くなるといわれています。
・帝王切開
・吸引、鉗子分娩
・妊娠高血圧症候群
・低置胎盤、前置胎盤
どんな
治療をするの?
まず、診断基準に沿って臨床的に診断し、早期に治療を開始することが望まれます。
1.妊娠中または分娩後12時間以内に発症した場合
2.下記に示した症状・疾患(1つまたはそれ以上でも可)に対して集中的な医学治療が行われた場合
A 心停止
B 分娩後2時間以内の原因不明の大量出血1500ml以上
C 播種性血管内凝固症候群
D 呼吸不全
3.観察された所見や症状が他の疾患で説明できない場合
以上の3つにあてはまる場合、臨床的羊水塞栓症と診断し、すぐさま治療が開始されます。
低酸素血症や低血圧、心停止やDICなど、各症状に対する治療が行われます。マンパワーを集めること、高次医療機関への搬送も並行して行われます。 例えば、低酸素に対しては酸素マスクによる高濃度酸素の投与や人工呼吸、心停止に対しては心肺蘇生が行われます。子宮型羊水塞栓症の場合は、DICへの早期対応により救命率の上昇が期待できます。