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「弁護士をつけなくても大丈夫」と手紙を送りつけてくる医療機関にご注意を!医療ミスは専門の弁護士に。

2024.10.28

富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
司法試験に合格し、弁護士事務所での経験を積んだ後、国立大医学部を卒業し医師免許を取得
外科医としての勤務を経て、医療過誤専門の法律事務所を立ち上げました。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、法律と医学の両方の視点から産科を中心とした医療問題について発信します。


出産時の事故について、いきなり病院からお詫びの文章とともに「補償をしたいので簡易裁判所で調停をしませんか?」とお手紙がきたというケースはありませんか?
当事務所では最近、関東地方を中心にこのような相談が増えています。直近でも1件だけではありません。
これは要注意であることを皆さんにお伝えしたいと思います。

病院の名前で突然送られてくる手紙

そのお手紙には、「裁判ではないので弁護士はつけなくて大丈夫ですよ、安心してください」などと書かれていませんか?医療事故に遭われたご家族としては弁護士費用の負担なく、補償をしてもらえるのなら申し入れを受けても良いのではと感じ、自分で裁判所に出頭すれば、きちんと話を聞いてもらえると期待してしまうと思います。

しかし、このようなお手紙を送ってくるような病院、病院の代理人弁護士は本当に患者さんたちのことを考えているのでしょうか?

弁護士をつけなくても本当に大丈夫?

簡易裁判所での調停手続きを通して中立公正な判断を仰ぎながら、誠実にご本人たちと話し合いをしたいと、あたかも患者側に不利のないよう配慮しているかのような対応に思えます。しかし、私たちはこれまでの経験から、病院側に有利に話し合いを進めるための戦略ではないかと考えています。

病院側にメリットがなければ、このような方法をわざわざとる必要はないはずです。
弁護士費用も調停費用もかかるのに、なぜ病院側が急いで調停を申し立てるのでしょうか?

まず、「調停をします」といきなり手紙を送りつけてくること自体が不自然です。被害に遭われた方が戸惑うのも当然です。一般の方にとって身近ではない「調停」という言葉にも穏やかではいられないと思います。

調停とは?

本来なら調停は、「裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続き」として、裁判官、調停員を交えて行う手続きです。手続き自体は簡便で、弁護士などの代理人を立てずに当事者だけで進めていくことも可能です。
そのため、離婚や相続のトラブルなどで話し合いをする方法として調停が活用されます。

しかし、医療事故についてはカルテを検討して、過失の有無や因果関係を明らかにしていく作業も行わなければなりません。医療の知識がない調停委員やご本人たちだけで医療機関側の言い分が正しいのかどうかを判断したり、医学的な主張を理解することはかなり難しいものです。

また、病院側には弁護士がついて、患者さんたちに有利な情報は、病院側が正直に話すとは考えにくく、うまく隠されてしまっても気づくことができません。そのため、見舞金や解決金が低額であっても気づかない可能性もあります。

金額交渉で不利になる可能性

産婦人科クリニックや医療機関側(保険会社)としては、できるだけ低い金額で早期に解決し、訴訟を避けたいと考えています。そのため、あえて「調停はご本人たちだけで手続きできますよ」と念を押すことで、患者側に弁護士が介入して法的責任を追及されたり、正当な金額を計算して提示される前に解決してしまいたいのです。

例えば、出産時の事故で病院に重大な過失があり、お子さんに重度の脳性麻痺の後遺症が残ったようなケースでは、将来お子さんが働いて得られたはずのお金や、介護によってご両親どちらかが働けなくなってしまった損害、生涯にわたってかかる介護費用など、正しく積算して請求すべき金額は1億~2億円を下らないこともあります。

そのことを知らずに、病院側が提示した金額をそのまま受け入れて調停が成立してしまうと、正式な法的手続きで、判決と同じような効力が生じるため後から裁判をしたいと思っても、できなくなってしまいます。

もし出産時の事故について、疑問に思っていることがある、調停申立をされそうになっている、産院のカルテを取り寄せたい、など悩まれていることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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