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脳性麻痺児は寿命が短い?

2024.06.13

富永愛法律事務所 医師・弁護士 富永 愛 です。
司法試験に合格し、弁護士事務所での経験を積んだ後、国立大医学部を卒業し医師免許を取得
外科医としての勤務を経て、医療過誤専門の法律事務所を立ち上げました。
実際に産婦人科の医療現場を経験した医師として、法律と医学の両方の視点から産科を中心とした医療問題について発信します。


お子さんが脳性麻痺と診断されたら、お母さんやご家族が抱える悩みは数え切れず、「この子は将来歩けるのか、話せるのか」と心配になり、「長く生きられるのかな?」と不安を抱くご家族が多くいらっしゃるのではないかと思います。

脳性麻痺の寿命への影響は?

脳性麻痺の程度が関係しているという報告があります。
他にも、重度の呼吸障害や合併している病気、知的障害の程度なども影響しているのではないかといわれています。

脳性麻痺の生存率

産科医療補償制度を運営する公益財団法人日本医療機能評価機構は、2011年に脳性麻痺児を対象とした予後に関する医学的調査を行いました。

調査の中で、脳性麻痺児の出生から5年生存率、20年生存率のデータを報告しています。

  • 5年生存率 0.969(標準誤差0.007)
  • 20年生存率 0.837(標準誤差0.024)

この結果に男女差はなく、5年生存率は9割を超え、20年生存率も8割を超える結果でした。

以前は短命と思われていた脳性麻痺などの重症心身障害児も、医療の進歩とともに平均寿命が伸びていると考えられます。

脳性麻痺については、「脳性まひとは」で解説しています。

どんな生活を送っているのか

脳性麻痺を含む重症心身障害児は日本で約4万人いるとされ、そのうちの約1/3が施設に入所し、約2/3は在宅で生活をしているといわれています。

在宅介護は想像以上に大変

お子さんが小さいうちは、ほとんどが在宅でご家族の介護を受けて生活しています。

ご家族の中でも、特にお母さんの負担が大きくなっていることが多く、日常生活の介助、医療的ケアと一日中介護に追われ休む暇もなく、ゆっくり眠ることもできず、常にお子さんのことを気にかける毎日を送っておられます。

訪問看護などの活用は、お子さんが専門的なケアを受けられることはもちろんですが、周囲の方との関わりによってお母さんの精神的・肉体的ストレスを軽減することも大きな役割ではないかと思います。

長く続く介護生活だからこそ、お母さんがほっと一息つける時間が持てるよう、より一層受けられるサービスや制度の充実が望まれます。

障害の程度や家庭環境によって利用しているサービス・施設も様々

・訪問看護
・居宅介護
・訪問訓練
・通所訓練や治療
・ショートステイ
・移動支援、移送サービス

利用されている割合は、通所訓練や治療が最も多く、お子さんの年齢が低い、胃ろうや人工呼吸器が必要な場合、重度の知的障害がある場合などは訪問看護を利用されているご家庭が多くなっています。

総合的なケアが可能な重症心身障害児施設

重度の知的障害や肢体不自由を持つ重症心身障害児(者)が利用する重症心身障害児施設は、全国に約200カ所あります。

重症心身障害児施設は、「治療」・「療育」・「日常生活の支援」の役割を持ち、利用されている方の障害の程度や年齢も様々です。
一人ひとりに合わせた継続的なケアを受けることが可能になり、こうした施設の広がりも寿命が伸びている背景にあるといわれています。

入所者の高齢化に対する課題

施設では、食事や生活が正しく管理され、継続的かつ丁寧なリハビリや治療が受けられることで、入所者の高齢化が進み、退所する方が少なくなっています。

必要な健康管理・医療的ケアによって寿命を全うできるようになったことは喜ばしいことですが、新たな課題が生まれています。

施設の数や、受け入れ可能な人数にも限りがあり、希望するすべての方が入所できるわけではありません。

しかし、濃厚な医療的ケアを必要とする重症児を自宅で介護することが困難だったり、ご両親の高齢化などで入所を希望する方が増えています。
待機されている方も多くいるのが現状です。

ライフステージに合わせたケア

乳幼児期や就学期は、心身の成長期でもあり積極的にリハビリや装具療法、治療が行われています。

一方で、学校を卒業したり成人した後は利用できる制度に制限があったり、リハビリを受けられる医療機関が限られ、リハビリや学習を継続する機会を失ってしまう方も多いといいます。

脳性麻痺では生涯にわたって医療的ケアやリハビリが必要です。
お子さんが歳を重ねても充実した生活を送るために、ライフステージに合わせて、継続してケアが受けられるよう、情報を集めておくことも大切だと思います。

脳性麻痺の原因は医療ミスではないか…

お子さんの脳性麻痺の原因が出産時の医療ミスではないか、と疑問を持たれている方は、
産科医療LABO(富永愛法律事務所)に一度ご相談ください。

産科医療補償制度の原因分析報告書や出産時のカルテをもとに、出産時に何が起こったのかを、産婦人科の医療現場を経験した医師・弁護士が解明します。

「産科医療保障制度とは」のページでは、制度についての詳細や弁護士が関わることのメリットをご説明していますので併せてご覧ください。

参考文献

公益財団法人日本医療機能評価機構

  • 重度脳性麻痺児の予後に関する医学的調査
  • 脳性麻痺児の看護・介護の実態把握に関する調査報告書

この記事を書いた人(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。

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